【読書メモ】『なぜイタリアの村は美しく元気なのか〜市民のスロー志向に答えた農村の選択〜』

基本情報

アグリツーリズモ

『なぜイタリアの村は美しく元気なのか〜市民のスロー志向に答えた農村の選択〜』

都市・地域計画を専門にしている宗田好史さんの2012年の著書です。宗田さんはイタリアへの留学経験もあるそうです。

こちらはイタリア語の題もついています(本文は全文日本語です)。下に日本語の意味をつけてみました。
AGRITURISMO
(アグリツーリズモ=イタリアの農村観光、アグリツーリズム)
Slow Food, Città Slow e Paesaggio Rurale
(スローフード、スローシティと農村の景観)
このタイトルからもわかるように、イタリアの村が「美しく元気」な理由はアグリツーリズモスローフードスローシティにヒントがありそうですよね。

内容

主にイタリアの農村と農業が、戦後から現在にかけてどのように発展したのかが書かれています。

先ほども少し触れましたが、その要因として
アグリツーリズモと呼ばれる農村観光の普及
スローフード運動(詳しくはWikipediaを参照)
・農村部に広がった景観計画
・EUの共通農業政策(CAP)への対応
といったような動きが取り上げられています。

それぞれの詳細な話はさておき、ざっくりとまとめると

・都市の人が都会の暮らしに飽き、スローな生き方を求めるようになったから、農村が元気になり始めている。イタリアでのこの流れは、遠からず日本でも起こる。
・農村の発展には、大量生産型の古い農業を捨てること、景観の美しさを守り都市からの人々を受け入れることと、女性の活躍が大事。

といった感じです。

また、筆者の専門ということもあり、建築や景観に関する話は特に詳細に書かれていました。

以下ではイタリアの農村観光、アグリツーリズモについてをメインに、思ったこと考えたことをまとめていきます。

ざっと感想

イタリア×農家=めっちゃ楽しそう!

イタリアが好きなので、読んでいてとにかく楽しかったです。独自の食文化や歴史は本当に魅力的だと思います。

そしてなんといってもイタリア語の音が素敵。地名なんかが出てくるだけでもわくわくします。

とはいえイタリア自体にはまだ行ったことがないです。(笑)もともとトリノやナポリのような都市にいつか行きたいと思っていたのですが、これを読んで農村のアグリツーリズモも気になり始めました。

というのも、農家で食べるご飯は本当においしくて。一度北海道で有機野菜を作られている農家さんにファームステイをしたことがあるのですが、その農家さんの とうきびの甘さやズッキーニのみずみずしさは今も忘れられません。

ファームステイは滞在費ゼロで農作業をお手伝いするWWOOFのイメージが個人的には強いのですが、アグリツーリズモはどちらかというとお金を払ってゆったりする感じなのでしょうか。

地産地消とアグリツーリズモ

個人的には、
食品ロスを減らす
おいしく食べられる
という観点から地産地消はすすめられるべきだと思っています。野菜や果物は運んでいる間に傷んでしまうことは多いですし、傷まない技術が進んだとしても、とれたての方がおいしいに決まってます。

スローフード運動やアグリツーリズモの動きは、地産地消をすすめる点で良いことだと思いますし、日本でもぜひ進んでいってほしいと思いました。

一方疑問も

この本に書かれていることは、イタリアで実際に起こり始めている動きだと思います。事例もたくさん挙がっていますし、間違いはないでしょう。

しかし、どのくらい一般の人々に広まっているかは本当のところはちょっとわからないな、という印象でした。

実際、この本でも取り上げられていたチッタスロー(=スローシティ運動)は、上手くいっているところはわずかであり、課題が多く残っているという話をききます。『内発的農村発展論〜理論と実践〜』(2018)の14章「欧州におけるスローシティの実践と課題-イタリアとドイツの事例から」(偶然にもゼミで読みました)では、イタリア南部とドイツのチッタスロー登録都市の現状と課題が浮き彫りにされていました。

そのため、アグリツーリズモもどのくらい浸透していて、どれだけ課題が残っているかは実際のところ数字だけではつかみにくいとは思います。ですが、食をはじめとして生活の”質”を上げていこうとする取り組みは、大量生産・大量消費に疲れが見えてきているいま、所得が高い国々が目指す方向性として正しいのではないかと思います。

日本の農村観光のこれからを考える

イタリアのアグリツーリズモと日本の農家民宿

さて、こちらの本ではイタリアの農村についてのお話がほとんどを占めていましたが、そこでは日本の現状がたびたび比較されていました。

著者の方が日本人なので当たり前っちゃ当たり前かもしれません(笑)。ですが両国とも、少子高齢化の傾向があったり、独自の食文化を持っていたりと、共通点が多く見えます。

そのため筆者の方が書いていたように、イタリアでのアグリツーリズモは日本にも応用できるし、その効果も期待できそうですよね。

この本によると、イタリアには19,700のアグリツーリズモの施設があり、イタリアの全宿泊施設の57%、宿泊総数の5%を占めているそうです(アグリツーリスト教会資料・2009年イタリア政府統計局調べによる)。現在はもっと増えているかもしれませんね。

また調べてみると、アグリツーリズモ関連のwebサイトがいろいろありました。

Agriturismo Italia
イタリア政府公式のアグリツーリズモのwebサイトのようです。認証された農家さんを検索することができます。さすが観光国家イタリア、多言語に対応していて、日本語ページもあります!

Agriturist
こちらはアグリツーリスト協会の公式webサイト。アグリツーリスト協会は、1965年にイタリアで初めて「アグリツーリズモ」という言葉を使いはじめたそうです。

Agroturismo.it
agriturisumo italy で検索するとトップに出てきました 。日付やキーワードから、イタリアの農家ホテルや農家レストランを検索できます。

Agriturismi.it
Agriturismo.itとまさかの1文字違い。内容は似ていて、目的地と到着・出発日時を入力すると候補を出してくれます。こちらも日本語を含む8カ国対応です。

Agriturismo.net
上2つとほとんど同じ内容のサイトです。高い満足度が売りとのこと。

それでは、日本でアグリツーリズムはどのくらい普及しているのでしょうか。農林水産省が実施している、2015年の農林業センサス結果の概要を見てみましょう。6ページの(8)の項目に、農家民宿と農家レストランのサービスを行っている農業経営体の数が載っています。2010年から2015年の間に

農家民宿は2,006→1,750
農家レストランは1,248→1,304

と変化しています。農家レストランは若干増えていますが、農家民宿は減少していますね。農家自体も減っている中で、農家民宿を兼業しようとする農家さんは少ないのでしょうか。ここらへんは詳しく調べるともう一つ記事ができてしまいそうなので、またの機会にします。

また、イタリアのAgriturismo.itのような、日本の農家民宿に限定した情報サイトで目立ったものは見つかりませんでした。これらのことから、日本のアグリツーリズムの普及度合いはイタリアに比べるとまだまだだと言っていいのではないでしょうか。

しかし、新しい観光の流れは確実に日本にも来つつあります。

観光庁が『着地型観光』というものを推進しているそうです。

『着地型観光』とは、大都市にツアー客が集合して出発するのではなく、観光地に現地集合・現地解散する新しい観光形態です。これにはアグリツーリズムだけでなく通常の文化観光も含まれます。

観光庁HPに載っている、2011年に行われた「着地型旅行市場現状調査報告」の第3章では、日本の消費者の着地型観光への意識について詳しく結果が出ています。ここらへんも掘り下げると一記事できそうなので割愛します。

日本でアグリツーリズムは流行るか?

さて、観光庁のこのような働きかけもありますが、ほんとうにアグリツーリズムを「良い」と思う人が増えなければ普及しないわけで。今の日本にアグリツーリズムは必要とされるのでしょうか。

この本では、日本でもイタリアと同じように、都市観光やリゾート観光に飽きた人々がアグリツーリズムを好むようになる、と予想されていましたが、何かきっかけとなる動きがない限り、当分はそこまで普及はしないのかな、と個人的には思います。

考えるに、「食への興味が人一倍ある!」という人でない限りは、東京には本当にたくさんの飲食店がありそれなりに美味しい食事ができますし、わざわざ地方に行く必要もないと思う人が多いのではないかと思います。東京の様子しか見たことがないのでなんとも言えませんが、「食にこだわっている」というとマニアックな印象がありますし、マクドナルド上陸に対してデモを起こしてしまうようなイタリア人の食へのこだわりよりも一般的ではないのかなと。

またアグリツーリズムは、バカンスの代わりとしての長期滞在のイメージが強く、長期休暇がとりにくい会社の多い日本では少しハードルが上がるのではないかと思います。実際に農家民宿をやっているところが短期滞在を受け入れていない、ということではなく、「短い休みなんだからもっとアクティブに色んなところに行こう!」という考え方になりやすく、ゆったり滞在するアグリツーリズムは働く世代の消費者には受け入れられにくいのではないでしょうか。

それでも農村での観光体験自体は、仕事に疲れた中高年や都市部の引退世代の高齢者には、非常に魅力的に映るのではないかと思います。また、ゴールデンウィークやお盆、年末年始の旅行の混雑を避ける選択肢にもなるでしょう。

そのため日本のアグリツーリズムの地位の向上には、
スローライフの価値、混雑回避といったメリットをアピール
充実した情報サイトの立ち上げ
短期間での観光モデルを提示
することが必要になってくると思います。

その他にも、アグリツーリズム経営の成功例が広く知られていることや、都会から来た人を農村がうまく受け入れること、建物や景観の美しさを保つことなど、大切なことはたくさんあるでしょう。

和食は世界無形文化遺産にも登録されていますし、地域固有の食材を使った料理を提供するユニークなレストランや旅館・民宿を展開すれば、都市に集中しがちな外国人観光客も見込めそうですね。

日本はイタリアに比べても魚を食べる文化が強いので、漁村観光なんかも素敵ですよね。新鮮な魚介を食べた後に海の音を聞きながら心地よい時間を過ごすのであれば、日本の漁村が1番なのではないでしょうか。

とはいえ私自身、日本の農家民宿には一度も訪れたことがないので、体験したら思うことも変わるかもしれません。まずは現場を見てみたいですね。

まとめ

量から質の消費へ

食にしても観光にしても、量から質への変化というのがこの本で挙げられている事例のキーワードになるのではないかと思います。

食料が余っている国々で、無駄を減らし持続的な生活を営んでいくためには、このような転換は必要不可欠なのではないでしょうか。

生活に取り入れたいアグリツーリズモ

先にも書きましたが、これを読んで純粋にアグリツーリズモや農村観光を楽しんでみたくなりました。日本でも海外でも、旅行に行くときは選択肢に入れてみたいと思います。

なんなら農家民宿やレストランを経営するのも面白そうだと思いました。もちろん都会でバリバリ働くより収入は減るでしょうが、お客さんを含めた人との関わりや、自然とともに生きる感覚など、お金では得られないものも多いのだろうなと思います。アグリツーリズモは、人生の選択肢としてもありなのではないでしょうか。

開設しました

以前からやってみたいと思っていた個人ブログなるものをこのたび開設しました。

というのも本当に衝動的なもので、気がついたらレンタルサーバーを購入していました。(笑)

タイトルは『Medley of』。寄せ集めという意味ですが、少しかっこつけて英語にしてみました。あとあと恥ずかしくなったらまた変えるかもしれません。ドメイン取っちゃったけど。

とりあえずはその名のとおり、このブログでは日々の読書録や考えたこと、体験の記録を、雑多に綴っていきたいと考えています。

ブログを作りたかった理由としては、自分のための備忘録があるといい、というのが1番にありました。まとまった記録をつくるにはTwitterだと字数が足りないしFBだとあとからさかのぼりにくいので、ブログという形態が一番適しているかなと。なのでそんなに大した情報は流せないです。ごめんなさい。

ですがあくまでも人目に触れるものなので、発信するという姿勢は常に忘れないように更新していきたいと思います。

CSSやWordpressの技術もまだまだ勉強中なので、デザインや写真等のメディアもこれから徐々にアップデートしていけたらと思います。