【デンマーク留学】Techfestival で未来の食について考える

コペンハーゲンに来て2週目の木曜日、授業がなかったので暇で暇で仕方なく、Facebookのイベントページをなんとなく見ていました。

そこで見つけたのが、『Rethinking Food in 21th Century(21世紀の食を見直そう)』というイベントでした。

なんとなく面白そうだと思って調べてみると、Techfestivalという大きなイベントのうちの1つという位置づけでした。

Techfestivalは今年は9/5-9の日程で開催されており、200クローネ(日本円で3700円くらい)のリストバンドチケットを一度買うとその期間に開催されている、テクノロジーに関するあらゆるセッションやワークショップに参加できるというものでした。これはお得かも!と思って即チケットをポチり。

とはいえ暇暇言っていた割に、金曜はCPR(住民票的なもの)の申請で3時間強待ったり、留学生の集まるパーティーに参加したはいいけど土曜日には疲れて12時間くらい寝たりしていたので、結局2つしか参加できませんでした。

とはいえ2つとも良かったので、少しでも内容をご紹介したいと思います。わたしが参加したセッションはこの2つでした。

・『Rethinking Food in 21th Century』

・『Perception of Nature and Locality in Relation to Food』

どちらも食に関係のあるもので、一見テクノロジーとはしかし離れているように見えます。しかし、食だけでなくテクノロジーでさえ、私達の生活の基本的な部分を形作っているいま、両者を切り離して考えることはもはやできないでしょう。

それでは、それぞれのイベントについてレポートしていきます。(わたしの拙い英語リスニング力によるもので内容の精度は決して高くありませんのでご了承ください 。)

21世紀の食を見直す

『Rethinking Food in 21th Century』は、それぞれ異なるフード系スタートアップの関係者3名が登壇しパネルディスカッションを行う、というものでした。時間は1時間ほどで、場所は高校の体育館のような場所で行われていました。

いきなりディスカッション

最初に5分ほど、隣の人と「未来の食がどのようになるのか」について話す時間が設けられていました。わたしは1人で参加したので、隣に座っていた1人で来ているらしき女性とお話をする流れに。(あとで名前を調べると、Lisa Abendさんというアメリカ人ライターの方でした。スペインに関するニュースや食についての記事を中心に執筆されているそうです!)このときは「高価でオーガニックな食品と大量生産かつ安価でケミカルな食品の格差がどんどん広がると思う」といったような話をしました。また「日本から交換留学で来ている」と話したところ、その日に発生した北海道の地震について心配をしてくださいました。

最適なレシピ提供で献立を簡単に

登壇者1人目は、Plant Jammerというアプリを提供している同名のスタートアップ企業のCEOの方でした。Plant Jammerは、冷蔵庫の中にある食材(特に野菜)を入力するとそれに合わせてレシピを提案してくれる素敵なアプリで、レシピを考える時間や、家庭でのフードロスの削減の実現を目標にしているようです。今はアプリが提供するレシピの数を徐々に増やしているようで、これからコペンハーゲンを中心に広まっていくことが期待されます。

身近なところからフードロスをなくす

2人目は、飲食店や小売店で販売できなくなった(けどまだ食べられる)食品を安く消費者に提供するプラットフォームToo Good To Goの開発に関わっている方でした。これは日本のWEBメディアにも取り上げられていることもあって、ご存知の方も少なくないのではないかと思います。こちらもやはりデンマーク発のアプリで、現在は欧州9カ国で利用されているそうです。

コーヒーという大きなリサイクル資源

3人目の方はコーヒーのリサイクルについてのお話をしてくださいました。企業名は聞き逃してしまったのですが、おそらくKaffe BuenoのCCOの方だったのではないかと思います。デンマーク人は1年で5000万kgのコーヒー豆を消費するそうですが(デンマークの人口が550万人ほどだと考えると世界有数のコーヒー消費国だといえそうです)、その99%を占める豆粕はすべて捨てられています。ここで廃棄されるコーヒーを少しでも再利用できないか、という思いで、美容オイルやコーヒーフラワー(小麦粉の代替品)を製造・販売するなど、リサイクルをビジネスとして行っているそうです。

用法・用量を守るテクノロジー

ディスカッションの中で印象的だったのが、Too Good To Goの方の発言でした。

「AIを使用して個人の好みにマッチした食品を表示するなどはしないのか」という質問に対し、「それではみんな必要以上に食品を欲してしまうから、(フードロスの削減という観点からすると)意味がないんだ」とおっしゃっていました。また、「Uber eatsのようにデリバリーのサービスの拡大はしないのか」という質問に対しては、「Too Good To Goは(消費者が直接取りに来れるくらいの)ローカルなつながりに焦点を当てているから、それはしない」と答えていました。

テクノロジーを活用したサービスを提供していながら、技術は目的に合ったものをしっかりと選択する姿勢、そしてあまり商業的になりすぎることなくあくまでサービスの社会的意義を強調する姿勢に感心しました。

自然・地域性・食、そしてテクノロジー

『Perception of Nature and Locality in Relation to Food』では、様々な分野の4名の方が順番に、食に関するプレゼンテーションを行っていました。

こちらも例のごとく近くの人と話すアイスブレイクタイムがあり、今回は仕事でこちらに来ているというフランス人女性とお話しました。「日本から来たよ」というと、「Matchaはフランスでも有名だよ〜」と言っていました。わたしはかなりの抹茶好きなので「まじでどんなお菓子にも合うよ!」と力説しておきました。

景観と食のつながり

1人目はこちらもフランスから来たというLandscape Architectureの方でした。近代化に伴い、食料を生産する農業の機能が、人の住む場所(=都市)から切り離されているということをおっしゃっていました。現代の人びとは、農村や山地などの美しい景観に関心を向ける一方で、そこで生産されている食については無関心であることが多く、景観と食との関係性を改めて考え直さなければならない、と主張されていました。

食においてわたしたちが目指すべきもの

2人目の方はどんな職業の人だったのかは確かではないのですが、テクノロジーと食のあり方について、全般的に、かつ明快に解説してくださいました。彼によると、テクノロジーはそもそも、複雑に込み入った自然を理解するために使われるものだといいます。例えば、発酵のプロセスなんかは科学技術なしには理解することはできなかったでしょう、と。また、生産者とのコミュニケーションツールとしてもテクノロジーを利用することができる、ともおっしゃっていました。しかしその一方で、テクノロジーによる弊害もあり、生産⇔消費の距離がどんどん離れていくことや、人間に都合のよい植物を画一的に栽培することにより遺伝的多様性が失われることなどがその例として挙げられるといいます。こうしてテクノロジーと食のあり方を整理したうえで、人類が目指すべきゴールとして「飢餓をなくす」「気候変動を解決する」「生物多様性を守る」「自然とより親しくなる」といったシンプルなものを提示していました。

テクノロジーができることとできないこと、いい影響と悪い影響、そして私達がやらなくてはいけないこと。こういったシンプルでありながら普段はあまり意識しない事柄を、明確に示してくださったので、一度思考が整理された気分になりました。そのうえでなぜ農業を学ぶのか、学んだ上で何をしたいのか、立ち止まってもう少し考えてみてもいいのかもしれません。

食料生産をもっと身近に

次に、垂直農法を提唱している方がお話をされていました。垂直農法というと、植物工場のような工業的な農業、というイメージを持つ人も多いと思います。しかし、ここで言われている垂直農法は、そのように大規模である必要はなく、都市の人たちでも気軽にできるような小規模のものも含まれます。実際の会場にも、3段ほどに積み上げられた水耕栽培キットが置いてあり、ある種のインテリアのような存在感を放っていました。彼が話すには、より多くの人が食料生産に関わることがこれからの時代に重要であり、それを始めやすくする仕組みが「垂直農法(vertical farming)」である、ということでした。そして、垂直農法により農地を節約することで森林が増え、人間が自然に触れる機会を提供することができ、人間の自然への理解へとつながる、ということをお話されていました。

この方がおっしゃっていた”Offering an easy way to get started”=「 (食料生産を)はじめやすくすること」というのは、現代において農業の振興を考えるうえで、もっとも大切な概念の一つなのではないだろうか、と思います。日本で農家の高齢化&戸数の減少が進んでいる理由として、「(特に若い人にとって)農業をはじめるハードルが高いこと」が大きいのは容易に想像できます。多くの土地を必要としない(それでも機材の費用などの問題はありますが)垂直農法は、そのような問題を解決するヒントになるのではないかと思います。良い視点を得られたので、これからの滞在を生かしてデンマークの就農事情や兼業農家の現状についてより詳しく調べてみたいなと思いました。

何もかも忘れて食べる

最後はコペンハーゲンでFood Artistとしてレストランを営んでいる方のお話でした。少しテクノロジーから離れてしまいますが、テーマは「どうしたら食事を美味しく食べられるか(How to be preasant in eating)」と非常にシンプルなもの。彼女はレストランのオーナーなので、もてなす側の話でしたが、「(お客様を)食事に集中させること、何もかも忘れてバケーションのように」というの言葉にはとても共感できました。忙しく孤独な現代社会ではこれは意外と難しくて、わたしもよくスマホ見ながらごはん、とかしてしまうので気をつけなければと思いました。ただ、大好きなケーキやチョコレートを食べるときには、なるべく他のことを考えないようにしています(笑)

テクノロジーの発展はもちろん、都市化の進行など、世界がどんどん変わっていく中で、人間にとっては相変わらず必須な「食」をどうやって生み出し、理解し、楽しむのかについて考えさせられたセッションでした。

全体的な感想

老若男女、国籍問わずいろいろな方がオーディエンスとして参加していたのが印象でした。「テクノロジー」というと、東京ではなんとなく「意識高い」と遠ざけられがちな印象があるけれど、コペンハーゲンではみんなが、テクノロジーという話題により気軽に触れている、と感じました。

また国民のほとんどがデンマーク人でデンマーク語が第一言語の国なのに、プログラムが全部英語で成り立っているのがすごいなと。英語でこういったイベントができることで、国境を超えた情報の交換がすごくスムーズに進んでいて、アイデアも生まれやすくなるのではないかと思いました。

合わせて2時間30分と、本当に少しの時間ではあったけれど、思わぬ出会いや発見があったりと価値のある時間でした。

食と農・海外留学・その他趣味についていろいろ書きます。東大農学部でお勉強する毎日です。現在はコペンハーゲン大学に交換留学中。 Twitter:@o_o_ho_o_o